第6回:外国人の英語アナウンサー

僕がNHKに最初に出勤した日、そこにいたのは日本人の英語アナウンサーだけだったが、しばらくいるうちに当然のことながら英語を母国語とするアナウンサーもいることに気がついた。もうずいぶん前になるので名前がうろ覚えのところもあるが、思い出す限り何人かをご紹介したい。また、それぞれの「立場の違い」も記したい。

まず思い出すのはルイス・ブッシュさん。背の高いイギリス人だった。1971年当時ブッシュさんはNHKのラジオ第二放送の英語ニュースの読み手だった。その関係で英語アナウンス部門にデスクがあったが、当時ほとんど見かけることはなかった。全くの浦島太郎だった僕はブッシュさんがどの様な方か全く存じ上げなかったのだが、亡くなられた後英国海軍の軍人であり、戦前日本に英語教師として来ていたこととか、奥様が日本人だったこととかも後になってわかった。親日家であり日本の収容所生活について著書もある事も後日知った。当然日本語も堪能だったがその時は分からなかった。もっといろいろお話できなかったことは残念なことだ。ブッシュさんとは最後にご子息の教育の関係で本国に戻られる時に同僚の森川淑子さんのインタビューに立ち会った事も今となっては良い思い出だ。

戦前から日本在住の、ブッシュさんの様な方とはまた別枠の外国人の英語アナウンサーもいた。一人は当時オーストラリアの放送局からNHKの日本語アナウンサーと交換で派遣されていたアナウンサーだった。もうあまり定かではないが確かアイルランドかスコットランド風の名前で、ブライアン・マキナニーと言った様に思う。当時読み始めたばかりの僕の英語ニュースについてコメントしてくれて、ここのニュースの頭の「アタック」attackが足りないと言ってくれた事を覚えている。確かにその通りで、そうしないと全くメリハリが無いニュースの羅列になってしまうわけだ。ただ、入ったばかりの当時僕にはその意味が良くわからなかったし、どうしたら良いのかについてはいくらアドバイスをもらってもまだまだ時間がかかることだった。後もう一人イギリスBBCの国際放送、ワールドサービスから同じく交換で来ていたはずだが、ほとんど記憶にない。丁度入れ替えの時だったのかもしれない。こちらの交換はオーストラリのアナウンサーの交換とは違って英語アナウンスグループの一員が派遣される仕組みになっていたが、このあたりのことも僕はほとんど知らなかった。後から分かったのだが、英語アナウンスグループのメンバーはほぼ全員BBCに派遣されたいがために英語アナウンスに所属していたらしい。

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