第054回:キングストントリオの事

米フォーク・グループ、キングストン・トリオのオリジナル・メンバーで、グループのかなめの存在だったボブ・シェーンが2020年1月26日、アリゾナ州フェニックスの自宅で亡くなった。85歳だった。

僕が大学に入った1963年当時のアメリカはフォークブームの最中にあった。中でもボブ・シェーン、デイヴ・ガード、ニック・レイノルズの3人で結成されたキングストン・トリオは、50年代後半から60年代にかけて最も成功したグループの一つだった。

一体彼らは何故あれほどポピュラーだったのか。今思うにおそらく彼らは時代の精神を体現していたのだと思われる。アメリカはまだ世界のために何かをしようと言う気持ちがあった。その中心となったのがケネディー大統領だった。ケネデイーの勝利は画期的な出来事だった。今となっては当たり前のように思えるが、当時はアイルランド系カトリック信者と言うことは大統領の経歴としては異色だった。そして就任式の日に彼がアメリカ人に訴えた事。

“My fellow Americans, ask not what your country can do for you; ask what you can do for your country.”

「我同胞のアメリカ人諸君。あなたの国があなたのために何ができるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるかを問いなさい。」

若い大統領の出現が新しい時代を運んできた。彼はちょうど今のトランプ大統領と正反対の位置にいるように思える。トランプ大統領がAmerica First と言う時に彼は全く自己主義のアメリカ(トランプ自身の延長線であるアメリカ)のことを語っている。他者との協力などそこにはない。自分さえよければ良いと彼は言っているのだ。

ケネディ大統領は就任演説の中でソビエトとの協力も示唆してこう言っている。

 “Let both sides seek to invoke the wonders of science instead of its terrors. Together let us explore the stars, conquer the deserts, eradicate disease, tap the ocean depths, and encourage the arts and commerce.”

「(アメリカとソ連)双方、恐怖ではなく科学の驚異を呼び起こす事に努めよう。ともに星を探検し、砂漠を征服し、病気を根絶し、海の底を探索し、そして芸術と物流を推奨しようではないか 」

シェーンは、他のメンバーと1969年にニュー・キングストン・トリオを結成。その後、何度かメンバー・チェンジを繰り返し、1981年にはシェーンは様々なメンバーと活動を続けていたが、2004年に心臓発作のためキャリアに終止符を打った。シェーンはじめオリジナルのメンバーはもういないが、同名のグループはまだ活動している。

シェーンは2010年にグラミー賞の特別功労賞を受賞しています。

安らかにお眠りください。

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